〜バイタルサインは生命徴候である②時間を考慮した評価の順序〜
・バイタルサインに国際的な定義はない(2017.2現在)
・バイタルサインは一般的に、4つの基本と第5、第6があるといわれる
・診療においては時間的猶予も考えて、バイタルサインを評価する
・呼吸→循環→意識→体温 (JATECTMにおけるABCDEアプローチ)
それでは、バイタルサインを具体的に考えてみます。
バイタルサインに国際的な定義は存在するのでしょうか?
調べてみたところ、、、、見当たりませんでした。
が、多くの成書で記載されているようなことが一般的と思われ、そして自分自身も
そのような認識で理解し、対応し、今日までそんなに間違っている感じもなかった
ので、それを記載しようと思います。
バイタルサインは基本の4つと第5、第6があると言われています。
〜基本のバイタルサイン (Primary vital signs)〜
呼吸数・心拍数・血圧・体温
http://www.emergencycareforyou.org/Emergency-101/Vital-Signs/
Schriger DL. Approach to the patient with abnormal vital signs. Goldman L, Ausiello D. Cecil Textbook of Medicine. 23rd ed. Philadelphia, Pa:Saunders Elsevier; 2007:chap 7.
〜第5のバイタルサイン (fifth vital signs) 〜
意識レベル*・SpO2**・疼痛*** etc
*J Trauma. 59: 821–8; discussion 828–9.
**Acad Emerg Med. 5 (9): 858–65.Pediatrics. 99 (5): 681–6.Chest. 94 (2): 227.
***https://www.va.gov/painmanagement/docs/toolkit.pdfJ Am Board Fam Med. 22(3): 291–298.
〜第6のバイタルサイン (sixth vital signs)〜
EtCO2*・歩行スピード** etc
*J Trauma. 59: 821–8; discussion 828–9.Harefuah. 139 (3–4): 85–7, 168.
**J Am Geriatr Soc. 51 (9): 314–322
(https://en.wikipedia.org/wiki/Vital_signs#Additional_signsより引用)
さて、このようにバイタルサインに確立した定義はない上、第5、第6として複数の指標が提唱されています。
広義でいえば、バイタルサイン=生きている証しとなりますが、実際の診察においては、上記を網羅的に評価するのではなく、時間的概念も取り入れると非常に有用です。
なぜなら、進行する病態に対して、急ぐことから順番に対応していけば、患者さんを危険な状況からいち早く、蘇生することが可能であるからです。
ちなみに、上記のバイタルサインの変遷を想像すると
・基本のバイタルサインは何の道具も使わず、五感で判断できるものとして成立
・その後、
① 医療の発達とともに様々なデバイスが開発されSpO2/EtCO2などが指標として提唱
② 同時に老年医学・緩和ケア的概念から疼痛・歩行速度といったQOL/PSを示唆する指標が提唱
という流れなのかなとも思ったりもしました。
話は逸れましたが、ここで、上記のバイタルサインを時間的概念を取り入れて考えてみます。
時間的概念というのは、”いよいよ致死的事態になるまでの猶予時間はどのくらいか”ということです。(一説では、その目安として)
気道緊急→数分、呼吸不全→30分、循環不全→1時間、意識障害→4,5時間( or 即)
と言われており、上記のバイタルサインを取り入れてまとめると
○呼吸(Airway/Breathing) :呼吸数、SpO2 ± EtCO2
○循環(Circulation) :心拍数、血圧
○意識(Dysfunction of CNS):意識レベル
○体温(Environment)
の順になります。そして、これはいわゆる生理学的徴候であり、JATECTMコース(http://www.jtcr-jatec.org/index_jatec.html)でも用いられている「まずはPrimary survey(第一段階評価)として、生理学的徴候に着目する(ABCDEアプローチ)」という考え方に通じるものです。
(ちなみに、上記以外の”疼痛・歩行スピード”は急性期に必須の生理学的徴候の範囲外と考えており、ここでは考慮しません(後々述べますが、疼痛は主訴として重要であり、鎮痛という対症療法が急性期にも必要であることは言うまでもありません)