~診療は常に同じ流れで対応できる②思考プロセスの転換~
○診断名→病態→症状→所見→治療のアプローチはあくまで診断がついてから
○まずは診断をつけるために症状所見へアプローチ
○診断がついたら、疾患に対して詳細にアプローチ
○そのそれぞれの段階で適宜、治療が必要になる
さて、以前は診療に対するアプローチの方法として、
”病態に基づいた生理学的・解剖学的アプローチの重要性”
をお話ししました。
これによって、診療の質が格段に向上し、また、早期認知・早期対応ができるようになり、不安も少なくなった
と述べましたが、その本質はまさに「緊急性が高い状況から順を追っていること」にあると思います。すなわちそのメリットは、
①早期に緊急病態をCatchでき、重篤化・余計な合併症の出現リスクを減らせる
②緊急病態を意識しているため、その見落としが少ない
③緊急病態は一般診察では決してCommonではない(救命救急センター等高次医療機関を除く)が、いざ遭遇すると、慣れていない場合には行動が遅れてしまいがちになる。普段から緊急病態を意識していることから、このような予期せぬ事態にもある程度、対応ができるようになる
④緊急性が高い病態には早期から同時並行的に治療を行う必要がでてくる(例)呼吸不全→その是正、ショック→ショックの離脱etc)が、緊急性に応じて治療も進むため、優先順位を意識した対応ができる
などなど、その恩恵は多大であると思います。
この「思考プロセスの転換」に最初に、つまづいたのはやはり、初期研修の頃でした。
本邦の医療専門の書物では、
①診断 :・・・
②病態 :・・・
③原因 :・・・
④症状 :・・・
⑤身体所見:・・・
⑥検査所見:・・・
⑦治療 :・・・ (時に重症化すると・・・の治療が必要になることもある)
⑧合併症 :
⑨予後 :比較的良好。合併症が出現すると不良になることがある
というような記載をみることがあります。
この記載は”診断ありき・疾患ありき”の方法であり、そもそも目の前に現れる患者さんは、病名をもっては現れません。
上記の記載はあくまで、診断がついた後で役に立つ思考プロセスと思います。
この思考では、患者さんへの対応はどうしても遅くなってしまいがちでした(あくまで僕個人の見解ですが)。それはなぜかと考えれば、自分の頭の中で、上記した①〜⑨の順序を変える必要があったからです。
では、患者さんはどのように受診するのか?
通常の診察を想像すればわかるように、このように症状や所見をもって受診します。
つまり、
④症状 :・・・
⑤身体所見:・・・
⑥検査所見:・・・
②病態 :・・・
①診断 :・・・
③原因 :・・・
⑦治療 :・・・
⑧合併症 :・・・
⑨予後 :・・・
大雑把にいって、このように思考の流れを変える必要があるのです。事実、自分の頭の中ではこのように思考をかえていました。
そして、さらに細かいことをいえば、一番上に示した”緊急性を意識したアプローチ”の意味合いを加えると、そのそれぞれの段階で同時並行的に必要な治療が加わることになります。
⑦治療 :緊急性への対応
④症状 :・・・
⑦'治療 :症状への対症療法
⑤身体所見:・・・
⑥検査所見:・・・
⑦''治療 :所見への対症療法
②病態 :・・・
⑦'''治療 :病態を意識した対症療法
①診断 :・・・
③原因 :・・・
⑦’’’'治療 :原因に対する治療
⑧合併症 :
⑦'''''治療 :合併症に対する治療
⑨予後 :比較的良好。合併症が出現すると不良になることがある
やや煩雑になってしまいましたが、要は
○診断名→病態→症状→所見→治療のアプローチはあくまで診断がついてから
○まずは診断をつけるために症状所見へアプローチ
○診断がついたら、疾患に対して詳細にアプローチ
○そのそれぞれの段階で適宜、治療が必要になる
という思考プロセスの転換がReasonableな診療のコツになるのではないかと思っています。