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a brilliant donut

医療を中心とした、話題を。いつか、どこかで、誰かの役にたてば幸いです。

進行した認知症患者さんの食事問題

・進行した認知症の場合、食事摂取や薬の服用が予定通り行えないということはしばしば遭遇する問題である

・そのような場合、”ムラ”を許容し、本人のペースに合わせることが大切で有効かもしれない

 

先日、当院を退院したばかりの患者さんが当院に搬送されてきました

 

内容は「食事や薬をしっかりとってくれない」というものでした

 

検査の結果、特記すべき急性病態の関与の可能性は少なく、ご家族様のお話し等々を総合(10年来のアルツハイマー認知症があり、急性経過ではなく、以前から食事、薬の服用にはムラがあり、また抵抗することがあったとのこと)すると「進行した認知症による慢性的な影響であり、untreatableかつslowly progressiveなもの」と考えられ、食事と補液で経過を観察することしました

 

入院中の食事・薬剤の服用には”ムラ”があったものの、本人の状況に任せてスキップ可とし、経過をみておりました

 

最終的には、食事・内服の”ムラを許容”する形で、本人の状態・検査値的異常も特記すべきものなく安定して経過し(当然、もともとやせ型の体型で栄養状態がよいとはいえない状況でしたが、それが悪化することもなく)、施設に戻って行かれました

(ちなみにこの方はADL要介護4レベルで、ほぼベッド上におり、眠っている時間が多いものの、しっかりとコミュニケーションは取れる方です)

 

このような「進行認知症に対する食事の問題」とはどのようなものかを調べてみました

 

①食事の問題は“認知症進行期でみられる特質であり、しばしば遭遇する問題”である

(National Hospice and Palliative Care Organization: Facts and Figures. 2012. http://www.nhpco.org/sites/default/files/public/Statistics_Research/2012_Facts_Figures.pdf (Accessed on March 29, 2013).)

 

②具体的な状況としては

  • 口の問題 :溜め込む、吐き出す
  • 喉の問題 :飲み込みの遅延、誤嚥 → 誤嚥性肺炎
  • 気分の問題:食への興味低下、食事の拒否

 がある

 

③対応方法としては経口摂取の継続と経管栄養(PEG etc)の導入の2択があるが、経口摂取が推奨される(J Am Geriatr Soc 2014; 62:1590.CMAJ 2014; 186:1319.Feeding tubes for people with Alzheimer's Disease.http://www.choosingwisely.org/wp-content/uploads/2014/05/CR-ChoosingWiselyFeedingTubeAGS-ER_052013.pdf(Accessed on September 05, 2014).)

 

(そもそも、栄養摂取の方法を直接比較したRCTはないものの、systematic reviewではそれが認められず(Cochrane Database Syst Rev 2009; :CD007209.)、比較的規模の大きいコホート研究でも生命予後の延長に寄与せず(J Am Geriatr Soc 2012; 60:1918. Arch Intern Med 2001; 161:594.)、栄養状態の改善もなく(J Am Geriatr Soc 1995; 43:447. J Am Geriatr Soc 2000; 48:1048.)、誤嚥性肺炎の予防効果も乏しく*( Lancet 1996; 348:1421.J Am Geriatr Soc 1990; 38:1195.)、経管栄養の導入による健康上のメリットは認められず、侵襲的処置による合併症リスクがあるだけである(N Engl J Med. 2000;342(3):206. JAMA. 1999;282(14):1365. Arch Intern Med. 2012 May;172(9):701-3.))

 

④具体的なコツは食事摂取の工夫と食事時の工夫である

○食事摂取の工夫;

  覚醒がしっかりしている時間に(scheduling meals)

  適切な姿勢で(optimizing positioning)

  気をそらすものを避け(minimizing distraction)

  摂取をしやすい器具を用いる(providing assistive utensils)

(Swallowing disorders and aspiration in palliative care: Assessment and strategies for managementAuthors:Tessa Goldsmith, MA, CCC-SLPAudrey Kurash Cohen, MS, CCC-SLPSection Editors:Eduardo Bruera, MDKenneth E Schmader, MDDaniel G Deschler, MD, FACSDeputy Editor:Diane MF Savarese, MDContributor DisclosuresAll topics are updated as new evidence becomes available and our peer review process is complete.Literature review current through: Apr 2017. | This topic last updated: Jan 06, 2016.Palliative care of patients with advanced dementiaAuthor:Susan L Mitchell, MD, MPHSection Editors:R Sean Morrison, MDSteven T DeKosky, MD, FAAN, FACP, FANADeputy Editor:April F Eichler, MD, MPHContributor DisclosuresAll topics are updated as new evidence becomes available and our peer review process is complete.Literature review current through: Apr 2017. | This topic last updated: Mar 01, 2017.)

○食事時の工夫;

  好物を食する

  食べやすい大きさで

  栄養補助食品を利用する

  (J Am Geriatr Soc. 2011;59(3):463.)

 

⑤経口摂取における重要な意義は

 ・適切なカロリー摂取ではなく、本人が楽しめる程度に食事を提供すること

 ・経口摂取のメリットは①食事を味わう喜び②食事を通して、介護者、家族と共に時間を過ごせること

 である(J Am Med Dir Assoc 2003; 4:27.)

 

進行した認知症患者さんの食事の問題というのはごくごくあるものであったのです。

 

そして、今回の場合も、「無理に食事や薬を試みると、拒否が強いものの、ムラを許容し、ペースを合わせた結果、そのようなことも少なく」なり、笑顔も見られるようになりました。

 

実際は、通常の食事時間(介助)と比較して長い食事時間を要することが多い(J Am Med Dir Assoc 2003; 4:27.)とのことですが、状況が許せば、

 

”本人のペースに合わせて、栄養学的な側面より緩和的・本人の精神心理的側面を考慮して食事摂取や服薬を考える”

 

ということがより大切で有効かもしれません

 

Referrence)Palliative care of patients with advanced dementiaAuthor:Susan L Mitchell, MD, MPHSection Editors:R Sean Morrison, MDSteven T DeKosky, MD, FAAN, FACP, FANADeputy Editor:April F Eichler, MD, MPHContributor DisclosuresAll topics are updated as new evidence becomes available and our peer review process is complete.Literature review current through: Apr 2017. | This topic last updated: Mar 01, 2017.