〜緊急度(Acuity)と重症度(Severity)〜
〜まとめ〜
・緊急度は ”時間的” 概念である → 緊急度が高いほど、急ぐ!
・重症度は ”予後的” 概念である → 重症度が高いほど、予後が不良である
・緊急度と重症度は異なる概念であるが、オーバーラップすることがある
(例)緊急度が高く、重症度が高い。緊急度は高いが、重症度は低い。)
・優先順位は緊急度>重症度である
診療の場で、しばしば、この2つの概念が重要となります。
ある疾患、病態を考えるときに、「緊急であるほど、重症であるほど」対応が難しくなります。
では、この2つの違いは何でしょうか。
研修医の頃は、「緊急度と重症度は”違う”。まずは緊急度が高い疾患を診断・除外するのが大事だ」と言われ、とにかく、緊急性が高いものを考えるという思考で診療にあたっていました。
それはそれで、間違ってはいなかったのですが、自分が最も誤解していたのは緊急度と重症度は”違う”という点でした。
自分は、この”違う”という言葉をこのように捉えていたのです。
診療をするうちに、「確かに緊急度と重症度は異なるが、往往にして、緊急度が高いものは重症度も高いよな。違うってどういうこと」という疑問がわいてきました。
さて、
緊急度(Acuity)は時間的概念です。
つまり、”急がないと状態が悪くなる”ということです。
対して、
重症度(Severity)は予後的概念です。
これは”分単位・時間単位では大きく変わらないけれども、生命予後・機能予後はよくないよ”ということです。
したがって、診療においては”いずれも重要”ですが、分単位・時間単位での”対応の優先順位を考えると、緊急度>重症度となる”わけです。
この、緊急度、重症度は当然、重なるものもあれば、そうでないものもあるわけです。
具体的には、以下のようなものでしょう(例えが間違っていたら、すみません)
・緊急度高・重症度高(例)循環不全を伴う急性心筋梗塞症(ACS-STEMI-#5 100%))
・緊急度低・重症度高(例)がん)
・緊急度低・重症度低(例)かぜ症候群)
つまり、緊急度と重症度は”違う”というのは”同じではないが重なることもある”ということだったのです。
これをわかりやすくすると、このようなイメージでしょうか。
当然、同じ疾患でも合併病態・背景・年齢等々で変わってくると思いますが、重要なことは
・緊急度と重症度の両者を意識する
・緊急度>重症度の順で対応する
ということになると思います。
参考)
緊急度判定の体系化;発症から根本治療まで:日臨救医誌(JJSEM)2016;19:60-5(https://www.jstage.jst.go.jp/article/jsem/19/1/19_60/_pdf
ブログと知的財産権
ブログを綴る上で、重要なのが知的財産権です
今回、ブログを始めるにあたり調べましたので、簡潔にまとめてみました
〜まとめ〜
「自分以外の文章・画像・動画をブログに記載する場合に著作権を考慮する」
「具体的には、引用を行う」
「引用を行う条件を満たす」
知的財産権(Intelelctual property lights)とは、
・知的財産(著作物など人間の創造的活動により生み出されるもの)に関した、
ものではなく”無体物である情報”に対する権利
とされています。(知的財産基本法:平成14年法律第122号)
具体的には、
・著作権
が代表的なものです。
このうち、ブログ記載で特に関連するものは、著作権ということになります。
そもそも、著作物は、「思想または感情を創作的に表現したものであって、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するもの」(著作権法第2条)であり、具体的には、
・文章
・画像
・動画
・音楽
がこれにあたります。
さて、著作権ですが、以下の特徴があります。
〜著作権〜
① 作成した段階で権利が発生し、届出は必要ない
② 目的は関係ない(非営利でも権利がある)
③ 私的使用のための複製は可能(ブログは容易に閲覧可能であり私的使用外)
つまり、実際に利用するためには”引用”という手段を使うことになりますが、ここにも条件があるようです。
〜引用〜
・公正な慣行に合致 ≒ 「明瞭区別性」(引用部分が明瞭に区別できる)
・目的上、正当な範囲内 ≒ 「必然性」(文脈から引用の理由、範囲が合理的)
「主従関係」(質量的に自らの著作部分が「主」で引用部分は「従」)
(著作権法第48条)
・出所の明示 ≒ 引用元を明記
何をするにも、日本は法治国家ですので、法に則るのが大切です
参考)
第1回 ブログを書くときに知っておきたい、著作権に関する知識【セコム】
AIと人間
仕事中、ふと、「将来は病院の看護の領域にもAIが関わってくるかもしれない」という会話をききました
AI
artificial intelligence
すなわち「人工知能」です
AIと仕事の関係が、一躍、注目されたきっかけとなったのは下記の論文のようです
THE FUTURE OF EMPLOYMENT:HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION? Carl Benedikt Frey and Michael A. Osborne September 17, 2013)(http://www.oxfordmartin.ox.ac.uk/downloads/academic/The_Future_of_Employment.pdf)
これによると、
・ガウス過程(gaussian process classifier)を用いた方法で、
・米国における702の職種が、コンピューター化(computerisation)される可能性を分析した
ところ、
「将来的に47%の仕事がコンピューター化される可能性がある」という結果でした
具体的な職種は上記論文Appendixに具体的に記載されていますが、それをみてみると、2つのことがみえてきました
1.コンピューター化しやすい仕事がある
コンピューターがコンピューターたるためにはプログラムが必要ですので*、プログラミングが容易で実行しやすい仕事がコンピューター化しやすいということになります。機械作業で行われている工場での大量生産みたいなものでしょうか。そして、AIとなると、さらに複雑なことでも対応できるようになるのかもしれません。
一方で、計算式では表せないこころ的側面や、新しいものを生み出す創造的側面はプログラミングが難しいかもしれません。
2.内容が多岐にわたる職種の場合は、その内容によってコンピューター化されるものとされないものがでてくる
1つの仕事でもその内容が単一ではないことがあります。看護の仕事を例に挙げると、1.で述べたように体位交換・食事・排泄介助などは比較的プログラミングしやすく、心に寄り添うケア的側面は難しいものとなりそうです
いずれにしても、AIに取って代わられるといようなネガティヴな考えではなく、
・精神的・肉体的負担が強いがプログラミングが可能な部分はAIとしての強みを生かし、
・コンピュータ化しにくい”こころ(心情)”と”創造(Innovation)”を必要とする部分で人間が活躍する
ような、win-winである共存社会は1つのかたちかもしれません
参考文献)
*Silberschatz, Abraham (1994). Operating System Concepts, Fourth Edition. Addison-Wesley. pp.58.ISBN 0-201050480-4.
糖尿病療養指導
糖尿病診療をしていると、患者さんから様々な意見をきくことがあります。
その中で、自分なりに気づいたこと、実際に行ったことをつづっていきます。
極力、Academicな視点を用いて。
〜血糖値を診る〜
血糖を診る場合も、通常の”系統的診療”の原則は変わらないと考えます。
つまり、そのエッセンスは、
○早期診断早期治療
○緊急性と病態を意識する
ことです。
医師になりたてのころは、血糖値がまったく”見えず”、どこに注目し、どう考え、どう行動していいかわかりませんでした。
実際に勉強をつみ、実臨床を経験したことで、ようやっと””みえて”きました。
系統的診療の原則の流れの中で、どのように”血糖値を診ていく”か、記載していきます。
~診療は常に同じ流れで対応できる①生理学的病態学的アプローチの礎~
研修医になりたてのころ、いつも緊張の中にいたことを覚えています。
「本当にこれで、よかったか」
「しっかりと診療できただろうか」
「状態が悪くなったらどうしよう」
「見落としはないか」
学生の頃の知識はあくまで、紙の上でのこと。
いざ、目の前の患者さんにとなると、不安ばかりがつのっていました。
このような僕の漠然とした不安に、1つの道筋を示してくれた機会がありました。
それはJTCR(日本外傷診療研究機構)が開催している「JATECTMコース(http://www.jtcr-jatec.org/index_jatec.html)」でした。
このコースは
・適切な処置を施せば助かると推定される外傷死亡(PTD, preventable trauma death)を減らすため、
・生理学的・解剖学的な系統的アプローチを行い、
・外傷診療の質を向上させる
ことを目的としています。
この生理学的・解剖学的なアプローチがヒントになりました。
病態に基づいた、生理学的・解剖学的なアプローチは外傷の患者さんのみならず、患者さん一般に適応できる考えです。
自分はこの考えに基づいて診療を行うようになってから、診療の質が格段に向上し、また、早期認知・早期対応ができるようになり、不安も少なくなったように思います。
ここでは、そのような系統的アプローチを自習と経験を踏まえて、自分なりにアレンジした方法を記述していきます。